関連する先駆的取り組み

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2007(平成19年度)の人間学群の取り組みは,学群コア科目を中心に行われました。しかし,サービス・ラーニングという言葉を用いる以前より,その精神なり方法なりを生かして,サービス・ラーニングに連なる豊かな教育実践を生み出してきた教員が,人間学群にはたくさんいます。ここでは,そのような実践の中からいくつかをピックアップし,学生の体験談も含めて紹介していきたいと思います。

関連する先駆的取り組み

1.障害学生支援室

障害学生支援室は,障害のある学生などを相談を受け,支援するために設置された学内組織です。本学では年間40名余の障害学生・大学院生(視覚障害,聴覚障害,運動障害,内部機能障害,発達障害,高次脳機能障害などをもつ),が学習・研究をしていますが,支援室では彼らの試験から入学,受講時の配慮を行ったり,移動支援や情報保障などのニーズに応じるべく努めています。また広いキャンパス内のバリアを調べ,学生部や施設部など学内諸機関と連携して改善を進めています。

このような活動には多くの学生の参加が必要です。障害学生支援室では,障害のある学生を支援する者に対して補助費を提供することによって円滑な活動の実施を助けています。また概論的な「共生キャンパスとボランティア」や実践的な「障害学生支援技術」(平成20年度より開講)を授業として開設し,全学的に障害学生支援の意義を学び深める機会を設けています。このような支援活動と授業を通じ,共に生きる社会について関心の広がった学生には,さらに障害科学類が開講するより専門的な授業を履修することもできます。

支援室のホームページにより詳しい活動の様子が紹介されていますので,併せてご覧ください。

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2.教育インターンシップ基礎論・実践演習

教育学類のコア科目である「教育インターンシップ基礎論」(2年次必修・1単位)と「教育インターンシップ実践演習」(2年次必修・1単位)の取り組みを紹介します。なお,両授業の「到達目標」と「授業概要」は以下の通りです。

教育インターンシップ基礎論
到達目標

教育活動に関与する多くの方々の講話に耳を傾けることを通して,教育活動の多様性に対する認識を深めるとともに,2年次以降の専門教育において特にどの研究領域を深めるかに関しての方向性を見定めることを目標とする。

授業概要

本授業は,教育インターンシップ実践演習において実際に教育現場を訪問することに先立ち,地域社会にはどのような教育現場があるのか,そこではどのような人たちがどのような教育活動を展開しているのかに関して,教員の講義やゲストの講話を通して主体的に考えることを内容とする。

教育インターンシップ実践演習
到達目標

教育現場を実際に訪問し,そこで展開される教育活動を観察することを通して,現場主義の発想に立って教育研究を進めることの重要性を認識することを目標とする。

授業概要

本授業は,地域社会(つくば市及び周辺地域)で展開される教育活動の現場を一定期間訪問し,そこでの教育活動を観察することを内容とする。

2008年度「教育インターンシップ基礎論」では,次の6名の方に教室を訪問していただき,学生に講話をしていただきました。奥村友映さん(筑波大学4年:学校ボランティアの立場から),野口真隆さん(神栖市波崎第二中学校教諭:中学校教員の立場から),矢野智子さん(母親の立場から),五十嵐亨・泉さん(自主保育コロボックル:地域子育て支援の立場から),太田美帆さん(東京大学助教:国際教育支援の立場から),都丸けい子さん(筑波大学準研究員:学校カウンセラーの立場から)。

また,「教育インターンシップ実践演習」では,学生は次の6箇所に分かれ,そこで展開されている教育活動を観察しました。学校教育に関しては,つくば市立谷田部中学校・つくば市立竹園東中学校,地域教育に関しては,つくば市地域子育てセンター(けやき広場)・特定非営利法人ままとーん(集いの広場)・自主保育コロボックル(ゴンタで遊ぼう)・子育て支援室(及び,子育てほっとステーション・オアシス)。学生は,1日~2日間の終日,教育活動現場を訪問しました。

2009年度も2008年度と同じように,授業を進めたいと考えています。

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3.教育学自由研究

「教育学自由研究」によるサービス・ラーニングの試み

「教育学自由研究」は、人間学類教育学主専攻の専門科目です。「自由研究」ですので、希望する教員が開講し、その内容も決めることになっています。教育プロジェクト・ワーキング・グループのメンバーである飯田は、平成19・20年度にこの科目を使い、「サービス・ラーニング」の考え方を取り入れた試みをしてみました。授業のテーマは、「活動を通して学ぶ『地域における子育て支援』」です。地域において子育て支援を行っているネットワークやサークル・団体の活動に実際に参加することにより、子育ての現状、親や子どもの実態について学習すること、そこに所在する問題や課題を知り、さらには問題解決、課題達成のための支援の在り方、支援のための組織や体制づくりについて学習することが目的です。

平成19年度には7人、平成20年度には3人の学生がこの科目を履修し、地域の子育て支援の活動に参加しました。参加の対象となった活動の主なものをあげると以下の通りです。

  • 子育て休憩室:子育て中の親子がほっと一息つきながら集う「井戸端」づくりの活動
  • つくば遊ぼう広場の会:ゴンタの丘「遊ぼう広場」にて様々な遊びを提供する活動
  • 社会教育指導員勉強会:つくば市の乳幼児家庭教育学級を担当する社会教育指導員有志による勉強会
  • つくば子育てフェスティバル:つくば市子育て支援室・地域子育て支援センター「けやき広場」主催の、子育て中の親子を対象にしたイベント

授業では、それぞれ活動に参加すると同時に、活動の報告をメーリングリストで交換し合うことにしました。また、時々、「全体会」を開き、報告された内容について話し合うことにしました。

学生がどのように社会活動に取り組むかが鍵となる試みです。19年度は学生が積極的に活動に参加し、メーリングリストでの報告や全体会での報告・話し合いが活発に行えました。20年度は、履修した学生の人数も少なかったせいか、低調なままに終わりました。どのようにして学生に参加の機会を提供するか。また、動機づけるか。指導する側としても課題の多い2年目でした。

19年度については「サービス・ラーニング」の観点から幾つかの成果があったように思います。例えば、社会教育指導員の勉強会では、参加した学生がつくば市の乳幼児家庭教育学級の歴史資料を整理し、勉強会に提供してくれました。社会の実践活動と学生の研究活動をリンクさせることができた例だと思います。社会活動に参加するなかで問題意識を深め、それが専門の学習や卒業研究につながってくれればと思っていましたが、そのようなケースも出てきました。「子育て休憩室」に参加した学生の一人は「育児サークルと母親の育児ストレスの関係」をテーマに卒業研究をまとめました。「遊ぼう広場」に参加した学生の場合は「プレーパークの開設」が卒業論文のテーマでした。このようなケースでは、活動を通じて知り合った方々に協力をお願いし、調査を実施することになりました。社会活動への参加は、卒業研究をはじめその後の学習の基盤づくりにもなります。

本学の所在するつくば市には、多くの子育て支援関連のサークル・団体があります。そうしたサークル・団体は、学生の参加を歓迎してくれています。「学生の皆さんの力を借りたい」という声も聞こえてきます。地域とのパートナー・シップを大事に、これからも機会あるごとに「サービス・ラーニング」を授業のなかに取り入れていきたいと考えています。

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